大学院を出て、研究者になると思っていた。研究テーマは天然編成タンパク質で、いわゆる根っからのリケジョ。研究も、部活も、バイトも、毎日が忙しく充実感のあるキャンパスライフ。不満があったわけじゃない。でも、ぼんやりと何かが足りない。ふと、そう思うことがあった。3年生になって、ちょっとした社会勉強にと始めた就職活動。そこで私は、9GATES.という会社に出会ってしまった。ただの不動産営業ではない。仕事もプライベートも、自分の何倍も本気で生きている人たちが存在すること。その生き方こそが、商品だということを体現していること。平凡ではない人生という、私の選択肢が、ここにはある。自分の中の足りないパーツがはまる音が聞こえた。

　9GATES.の営業には、クローザー（交渉人）というポジションがある。お客様との取引に必要な、不動産の知識はもちろん、ファイナンシャル、保険、人の人生に関わるあらゆる知識のスペシャリスト。入社して4年、ようやく私はこのクロウザーになることができた。これまで売上を上げて来られたのは、先輩や上司という補助輪があってこそ。むしろ、上司のチカラが9割だった。若いからとお客様に可愛がってもらえたこと、気をつかって頂いたこともあった。でもこれからは、本当の自分の実力勝負。私より何枚も上手のお客様に、パートナーとして認めていただくこと。たとえば商社のお客様であれば、原油やバナナの価格、世界情勢にまで。知識だけでなく、見られ方、話し方、伝え方、醸し出す空気、そのすべてが試される。自分の足で立つということ、その難しさをいま実感している。